キム・ヨナと「表現力」

今シーズン、ハッカー選手がフリーで「シェヘラザード」を演じているんですが、これが美しい! エキゾチックで包容力のあるシェヘラザード。
いやいや、表現に容姿は関係ないなんてよく言うけど、実際のところはやっぱりそうじゃないですよね~。
容姿に恵まれている人は明らかに得ですよ。
あのスパイラル、男性ならずとも目が釘付けになっちゃいますもん。
ひとこと言うとすれば、本当に曲の使い方が惜しい! もっと良い切り取り方ができると思うだけにねぇ。

日本でこれまでシェヘラザードを演じた人を挙げると、伊藤みどりさん、そして安藤美姫選手。
彼女たちの演じたシェヘラザードに、わたしは「シェヘラザード自身」はあまり感じなかったけれど、コルサコフのスケールの大きな曲にとても合った演技でドラマティックでした。
みどりさんはエネルギッシュ、ミキティは一途なシェラへザードという感じで、個人的にはパワフルなふたりの演技、とても大好きです。

さて、キム・ヨナさんのシェヘラザード。
彼女のシェヘラザードはミシェル・クワン選手をコピーしたものだとよく言われていますね。
確かに振り付けや衣装にはそう思わせるところがあります。
でも、演じ方を比較すると、個人的にはクワンのシェヘラとはあんまりかぶってないと感じるんですよね。
というのも、ミシェル・クワンは賢くて凛としたシェヘラザード。
キムさんのシェヘラザードは冒頭にニヤリと笑って、あたかも王様を色仕掛けで落とそうとしているように見えるんですが、どうなんでしょう。

実はね、最初はよくわからなくて、「もしやシェヘラじゃなくて王様の方を演じているんでは」とか思っちゃいました。オイオイ。
でも、随所に科を作っているような振り付けが入っているので、やはりシェヘラの方なんですよね。

シェヘラザードってのは知ってのとおり、アラビアンナイトのヒロイン。
彼女は国の宰相の愛娘で、愛していた前の王妃に裏切られて女性不振に陥った挙句、次々と女性を殺していく国王の妃になった女性ですね。
不眠症に苦しむ王のために、千一夜にわたって夜毎お話をして聞かせていたというのが千夜一夜物語(アラビアンナイト)。
シェヘラザードは毎晩、物語のオイシイところで「続きはまた、あしたの晩に」とやったので、王様はストーリーの続きを聞きたいがためにシェヘラザードを殺さずにおいたのだけど、日を重ねるうちにだんだんと心が解きほぐされ……。
アラビアンナイトではシェヘラザードは誰よりも美しく、誰よりも賢く、そして貞淑なイメージで描かれています。

テレビではこのところずっと「キムヨナ選手は表現力が~」と報道されているようなんですが、キム選手がアラビアンナイト、もしくはコルサコフの「シェヘラザード」のどういったところをイメージして表現しているのか、どうもわたしにはわかりません。
いえね、シェヘラザードの解釈っていろいろあると思うんですよ。
わたしも昔、「シェヘラザードには心に秘めた思い人がいた」という想定で、悩み、激情を秘めたシェラザードを曲にしたことがありますもん。
ただ、一般的なイメージと著しく離れた解釈をした場合には、それなりの説明や説得力が必要になります。
フィギュアスケートのフリーは女子の場合、たったの4分間ですから、それを全てパフォーマンスで表現していくのはとても難しいことなのですけどね。

あれこれ考えてたどり着いた唯一の結論が、キム選手はアラビアンナイトにおけるシェヘラザードがどんなキャラクターなのか、知らないんじゃないか、というコト。
そんなバカな、と思うけど、知っていてあのマイムとか、有り得んでしょう……。
一般的なシェヘラザードを表現しようとしてアレなら、正直彼女のフリーは失敗作だと思うし、別物のシェヘラザードを表現しようとしてアレなら、あらゆる点で表現が足りていないと思います。
そして、それを全てキム選手のせいと言ってしまえば、あまりにも彼女が気の毒だとも思います。
というのも、キム選手は自分の内面からの表現をするのではなくて、表情のつけ方も振付師に任せていると聞いたことがあるからです。
もちろん、本当に彼女がアラビアンナイトを理解していないのなら、言い訳はできないですけどね。

なので、わたしはキム選手にシェヘラザードの解釈について、だれかインタビュー取ってくれないかとずっと思ってます。
でも、なかなかそういう記事、目にしないですね~。
どこかにこの件について情報が無いかとネットをあさってみたんだけど、どうも無さげ。
うん、キム選手本人でなくても、コーチでも、振付師でもいいんですよ。
とにかく、何が真実なのか知りたいんです。
ただ、少なくとも審判の目にはアレが「良い」と映っているんでしょう。ここまで驚くほどの高得点が出ていますのでね。

キム選手の表現力について褒めている解説者にも、同じ質問をぶつけてみたいです。
キム選手がシェヘラザードをどう解釈してああいう風に演じているのか、ぜひ解説していただきたいと思ってます。
視聴者がわからない部分を解説してくれるのが、解説者の仕事ですからね。
ただ、「キム選手は氷の上では女優のよう」と評した八木沼サンについては、個人的には「女優」を舐めすぎだろう、と思いますが。

このところフィギュアスケート関係の番組を見ていると、つくづく「表現力」って魔法の言葉だな~と思います。
そして、テレビ番組を作っている中のヒトって、よっぽど「一般大衆には芸術も表現もわからない」と思ってるんだろうなぁ、とも。
でもね、一般大衆だってイイものを見れば感動するし、そうでなければ首をかしげたりするんですよ。
むしろヘンな先入観が無いだけに、専門家が見ないようにしているモノが見えたりすることがあるかもしれません。
まぁとりあえず、某ワイドショーのように、意図的に間違った情報を垂れ流したりするのは論外ですけどね。

♪ Open Arms – JOURNEY

コメント

  1. エミリ より:

    はじめまして。突然のコメントお許しください。
    私が言いたくても言えない事をずばり言って下さっているので、何だかすっきりしました。

    結局、彼女は内面から出てくる物がないので、振付師とコーチに言われた事をそのままやっているだけなのだろうと思います。そして、何かを表現する事やスケートの技術を向上させることよりもただ単に勝つことを目指している、そこに価値を見出しているのだと感じます。
    言われたとおりに踊り歌うアイドル歌手みたいな感じですね。

    シェヘラなど観た事もないのでしょうね。そういう人は女優も出来ない。

    一番かなしい事は、それをルールを彼女だけ甘くしてまで高得点を与えて称えるジャッジと、それを褒めまくり感心しながら解説するじゅんじゅんさんです……

    フィギュアスケートがこんなに薄っぺらくて軽いもので、その程度の審美感しか持たないジャッジ達に支配されているのなら将来はないのではと思わざるをえないです。ファンとしては非常に悲しいです。

  2. 管理人 より:

    エミリ様

    コメントありがとうございます。
    フィギュアスケート好きにとってはあのシェヘラ、やはり何かしら思うところが出てきますよね。

    キム選手に関しては、冒頭の豪快なコンビネーションジャンプが印象的ですが、決してテレビなどで謳われているような表現力の選手ではないと思います。
    むしろ表現は画一的、引出しは少ない方なんじゃないでしょうか。
    スパイラルやスピン、ステップなども取り立てて素晴らしいところがあるとは思えないので、あの高得点が奇異に映ってしまうんですよねぇ……。
    エッジのエラーや極度に厳しく取られる回転不足で苦しむほかの選手たちが本当に気の毒です。

    八木沼さんは……あのレベルの解説でずーっと起用されているということは、テレビ局にとってよっぽど都合のいい解説者なんでしょうね、きっと。