うーむ、マスコミがいかにも小躍りしてそうなタイトルだなぁ……。
⇒【記事】「本田、監督と対立!ボランチ拒否ベンチ外」
記事を読むとコンバートってわけじゃないんですよね。
けが人が続出してボランチのできる選手がいない、だからその能力のある本田選手に一時的に守備的な位置でプレーして欲しいと言われた。
そんな書き方です。
これだけでは実際に「対立」したのかどうかはわからないですが……。
まぁ、自分がどうしたいのかをはっきり言うことが大事というのは100%間違いないところでしょうね。
話し合いの中で本田選手がシンプルに「ボランチはやりたくない」という主張をしたという話なのか、それともポジションがかぶる他の選手と天秤に掛けられたように感じる何かがあったのかだけでも、かなり事情が変わってきますが……。
今回のこの話題でちょこっと思い出したのは、ワールドカップの際、オシムさんがポジションの話で「俊輔の後ろに本田を置きたい」と言ってたことでしょうか。
本人の希望は別として、本田圭佑という選手の資質のひとつとして、「屈強」「ファイトできる」っていう部分がある。
これって今までの先入観なしで見るからこそ、すんなり「守備的なポジションでもかなり高いレベルでこなせるのでは?」という発想が出てくるんじゃないですかね。
(もちろん今後の期待値込みで。)
それは本人の理想とするところとは逆に行くことになるかもしれないし、ファンからしても大きな違和感を持って聞く話になるかもしれない。
特にファンは、これまでの言動を見てきているからこそ(もしくはベストプレーをベースに先入観を持っているからこそ)、その選手はかくあるべきと型にはめて見てしまうところがあります。
全く先入観がない状態で「今の」プレーを見る外国の人の意見に対しては、「あいつは何も解ってない」という反応をしてしまいしがちです。
一例を挙げるとすると、プレースタイルもチーム状況も本田圭佑とは違うけれど、ローマに行った頃の中田英寿選手の場合もそんな感じだったのではないですか?
ローマへの加入が決まった当初、わたしはセリエA関係のフォーラムにもよく出入りしていたのですが、ローマのファンのイタリア人がさらっと、
「ナカタは左サイドもできるから、すごい期待できるね!」
と言ったのに、ものすごく驚いた記憶があります。
もちろんサイドハーフじゃなくてウィングね。しかもそのプレーを見たこともない状況で。
それが「できる」と実にさらっと言ってくれたわけです。
あのとき中田ヒデといえばトップ下(=日本で言うところの司令塔←ペルージャでもそれで結果を出してた)だと頑なに信じていたわたしには、この意見は衝撃的で、しかもどこか認めたくないものでした。
でも、その意見って、先入観なしに見ているからこその意見なんです。
そりゃあわたしだって、それまでにもいろんな想像はしていましたよ。
それに、ローマには王子(笑)トッティがいて、トッティと中田ヒデのプレースタイルを比べた場合に、中田がボランチという程度のことも想像していました。けど、サイドですからねー。
ついついその意見に対して否定的な思いを(できない、というのではなく、違和感的な意味で)抱いてしまったのを思い出します。
パターンはさらに本田選手とは離れてしまうかもしれないけど、中村俊輔選手のケースも面白かったですね。
俊輔選手が右サイドで起用され始めたのはレッジーナでの2年目からですが、そもそも俊輔選手がトルシエジャパンの選考から漏れたのは、左サイドでの起用を拒否してトップ下でのプレーに固執したからなんですね。
それがレッジーナで右サイドでプレーし始めて、フェイントを掛けて右足でいいクロスを上げる中村俊輔の姿は信じがたいものでしたけど、これだけのレベルにあっても人間、成長できるもんなんだなとかなり感慨深かったのも確かです。
それと同時に、良くぞ監督(名前わすれた)右で起用したよね、と。あんまり語られることはないような気がしますが、レッジーナでの2年目~3年目、特に3年目は非常に良かったんですよね、中村俊輔。
それがその後のセルティックでのプレーになるわけですが、右だろうと左だろうとトップ下だろうと、どこでプレーしようが実に「中村俊輔のプレー」でした。良くも悪くもね。
ベストではなくベターでも一定以上の評価を得るってのは本当はすごいことなんだけど、本人もファンも求めるところが違うというのはなかなかに難しいところです。
間違っていたら申し訳ないけど、オシムの言う「ポリバレント(多様性)」に対しても、(評価はしていても)実は日本ではあんまり好かれてはいないのではないですか?
日本人は職人芸、スペシャリスト的なものを好む傾向があります。
日本では「4>3+3」なんですね。(世界的にも5>3+3かもしれない、とは思うけど。)
さらに、本来のポジション以外の場所でプレーするのは「自分の意見を曲げた」的に看做されるところもあって、そのあたりは非常に難しい判断を迫られる部分ではあります。
まぁ、そんなこんなで。
今回の本田選手のポジションの話とオシムのポリバレントを一緒くたに語るのはちょっと乱暴でしたが、頭を巡ったことを取りとめもなく書き留めてみました。
今回の報道後、恐らく「我が道を行く本田△(本田サン、カッケ~)」という声もかなり多いのではと想像しますし、わたしも内心そう思っています。
ただ、その一方で、本田君も自分で「まだ自分のスタイルが見つかっていない」と言っていたわけだから、なんだか休むのはもったいなかったんじゃない?と思わなくもありません。
とは言え、これまでの事例はあくまでもこれまでのものとして、本田選手は自分の新しい歴史を作っているわけなので、今回の「お休み」も、ぜひ今後の糧にして欲しいですね。
♪Now Playing/ 夏色 – ゆず