期せずして白内障と診断され、手術を受けました。
そもそも白内障が何なのかもわからず、いきなり「手術」という言葉が出てきたので初めは戸惑うばかりでしたが、術後2週間(片眼は3週間)ちょっと経った今では、思い切って手術を受けて良かったなと思っています。
手術を受ける前には、特にレンズ選びに関してでしたが、いろいろなVlogやブログで勉強させてもらったので、わたしも自分の経験を拙いながらシェアしたいと思います。
これから白内障手術を考えている方、特に単焦点レンズを選ぶ方の参考に、少しでもなればと思います。
※注意※
専門的な知識のない、あくまでも個人の体験を元に書いています。
見え方に関しては個人差がかなり大きいので、参考程度に読んでいただけるようお願いします。
専門ドクターのチャンネル(YouTube)ではこちらが参考になります。
特に白内障ラボチャンネルは白内障に特化した内容なので、全ビデオをメモを取りながら見る勢いでも良いと思います。
白内障がどういうものか、手術の内容、各レンズの特性などについては上記チャンネル等をご覧ください。
レンズ選び「近くか遠くか」
わたしの通うクリニックでは、手術前の最終段階になってやっとレンズ選びの話が出ました。
「元々近視のある方は『近く』を、ない方は『遠く』をよく見えるように選ぶ方が多いです。カイさんは近視ですので近く合わせにしますが、それでいいですか?」
これは「元々の見え方に近いほうが混乱が少ない」という考え方からの選択方法で、一般的には「はい」という返事でもOKなことが多いようですが、わたしの場合、それではちょっと不安がありました。
近視=近くに合わせる?
白内障手術のレンズ選びではよく「遠く」「近く」「中間」といった言葉が出てきますが、それぞれの距離は具体的には以下のあたりを指すそうです(クリニックによって異なります)。
ピントの合う距離 | その範囲で行う活動例 | |
近く | 30cm~40cm | 読書、スマホ、裁縫、事務作業 |
50cm | ノートパソコン、食事 | |
中間 | 70cm~1m | デスクトップパソコン、調理、買い物 |
2m | テレビ視聴、散歩 | |
遠く | 5m | スポーツ、運転 |
さて、わたしは手術前の裸眼視力が両眼ともに0.02でしたので確かに「近視」ではあったのですが、朝起きたときから夜寝る直前までずっとコンタクトレンズをつけていて、普段は0.8程度見える生活をしていました。つまり、遠くもまずまず見えていたわけです。
0.8の視力は近視の範疇には入るものの、仕事でデスクトップパソコン(モニターまでの距離80cm)を使うのに無理がなく、さらに車の運転にも支障のない、わたしの生活にとってはきわめて都合の良い視力です。
メガネも持っていますが、コンタクトレンズをつけていない間の1日10分程度しか使っていません。
ところが、近視持ちだからと30cm~40cmの距離に合うレンズを選んでしまうと、運転はもちろんのこと、仕事をするとき、家事をするとき……と、かなりの長時間にわたってメガネが必要な生活になるはずです。
これまで常時メガネをかけていた方ならそれで違和感はないのかもしれませんが、ほとんどメガネを使わない生活をしてきてきた者の感覚だと、手術したばっかりに四六時中メガネが必要になってしまうのは(確かに近くはクリアに見えるようにはなるけれど)余りにももったいないです。
というわけで、わたしの生活スタイルの場合、「遠く」でも「近く」でもなく、その距離を使って活動する時間が一番長い「中間」にピントを合わせるのが最も適しているのではないかと思いました。
ピント外の距離は見えにくくなる
しかしここでよく考えるべきことがあります。単焦点レンズを選んだ場合、ピントを合わせた距離以外の場所は見えにくくなるという問題です。
この「見えにくい」というのがかなり想像しづらいので困るわけなのですが、前出の「白内障ラボチャンネル」を運営されている渡邊ドクターのブログに役立つ情報がありました。どこにピントが合っているとどの距離でどの程度の視力になるのかについて言及があったのです。
以下はブログ記事とビデオ内のドクターの発言を聴き取り、まとめたものです。「5m」はちょうど視力表の距離になりますね。
※「ピントが合う」などと表現されていた場合は、表では「0.8」としました。
※字の判別には0.6程度は欲しいとのこと。
ピント距離 | レンズ度数 | 期待できる視力 |
5m | 0D | 5m:1.0/1m:0.7~0.8/50cm:0.4/40cm:0.2 |
4m | -2.5D | 5m:0.9/50cm:0.5/40cm:0.3 |
2m | -0.5D | 5m:0.8/50cm:0.6/40cm:0.3 |
1.5m | -0.75D | 5m:0.6/50cm:0.7 |
1m | -1D | 5m:0.4~0.6/50cm:0.7/40cm:0.5 |
66.6cm | -1.5D | 5m:0.3~0.4 |
50cm | -2D | 5m:0.2/50cm:1.0/30cm:0.8 |
40cm | -2.5D | 50cm:0.8/40cm:1.0/20cm:0.8 |
30cm | -3D | 5m:0.1/30cm:1.0 |
※上の「視力」はあくまでも目安です。見え方には個人差が大きいですし、狙って手術してもどうしても誤差が出てしまうのが現状なのだそうです(想定範囲から外れても手術ミスではありません)。
上の表を見ていて、「2m合わせ」にすごく憧れました。0.8の視力があれば裸眼で運転できるし、近くもまあ見えなくはない。何よりわたしにとっては、これまでコンタクトをつけることで得ていた視力と似た状態が裸眼で得られるわけです。夢のようじゃないですか!
実際に渡邊ドクターも「2mに合わせてあげるのが好き。すごく喜ばれるから」と発言されていました。
でも同時に、40cmで0.3という近方視力が若干引っかかりました。これだとスマホやタブレットを見るのが辛いのかなぁと……。言ってみれば老眼状態になってしまうのですよね。
で、単焦点レンズの場合、度数は0.5刻みだそうなので、2m(-0.5D)でダメなら次は1m(-1D)合わせを考えてみます(ざっくり)。
1m合わせだと遠方視力はだいたい0.5程度にまで落ちますが、まあ見えないことに不安を感じる視力ではないですし、同時に近くもそこそこ見えそうな計算です。これなら室内では大半の時間をメガネ無しで過ごせるかも?
そして白内障手術には屈折誤差がつきものです。ですが、1mを希望して仮にやや遠方にピントがズレたとしても個人的にはある意味思う壺ですし、近方にズレたらズレたで近くがよりはっきり見えるまでのことです。
……というわけで、熟考の末、「中間合わせ(1m)」を希望することにしました。
ちなみに焦点に少し幅のある「レンティスコンフォート」や「テクニスアイハンス」ではなく、ノーマルな単焦点レンズです。
中間距離合わせでお願いします
そして前出の「カイさんは近視ですので近く合わせにしますが、それでいいですか?」に戻ります。
これまで「白内障ラボチャンネル」のビデオを繰り返し見ていて、その中でおっしゃっていた「希望は患者さん側からがんばって伝えてほしい」との渡邊ドクターの言葉を胸に、「いえっ、1mくらいに合わせてほしいです」とお願いしました。
スタッフの方は明らかに戸惑われた風で、「えっ、そんなところが見たいんですか?」とかなり怪訝な様子。……1mを希望した人、今までいなかったのか??????
でも「仕事で長時間見ている(複数)モニターまでの距離が80cmあって字もそこそこ小さいので」などと説明したところ、主治医の先生は「なるほどわかった。ではそれでやってみましょう!」とすんなり快諾してくださいました。これは本当に有り難かったです。
※ただし「モニター80cm」はイマイチな説明だったかもしれないと後になって気づきました。それについては後述。
手術中に見えたもの
両眼の手術は1週間空けて行われました。より悪い右を先に、状態の軽い左を1週間後に。
先に受けた左目はまさに無痛でして、全然楽だったのひとことでした。
ただし初めに「近視が強いので麻酔を追加します」と言われ、後で明細を見たら「球後麻酔」とあったので、そのおかげかも知れません。
「ちょっとチクッとしますよ」と言われても、全くの無痛でした。
「眩しいのが辛かった」との経験者さんのVlogを事前に見ていてちょっと心配だったのですが、手術開始時に先生が「今は眩しいですけど薬を追加しますので楽になるはずです」と言われ、その通り、すぐに楽になりました。
手術中は、良く言えば紫色のパンジーをちょっと縦長にしたような感じの模様、悪く(?)言えば紫色のお化けの犬の顔みたいなものが視界の中央に見えていました。
何度かチラチラとピンセット的なものも視界の端に入ってきましたが、目の前に見えるわけではないので怖さは感じませんでした。
手術は手術室に入って15分程度で終了。「途中で瞬きしたくなるのでは」「咳したくなるのでは」とかいろいろ考えていましたが、そういうことも特にありませんでした。
その後、翌朝の診察まで眼帯をつけるのですが、正直、手術よりも貼り付けられた眼帯のかゆみのほうが何倍も辛かったです。
2度目はわずかに痛みが
1度目があまりに楽だったので、「そんなにうまい話は何度もないだろう」などと考えてしまい、2度目の手術はかなり緊張してしまいました。
そのせいなのか、「チクッと」が本当にチクッとしたし、手術終盤には目の周りを押されたり触られたりといった感覚がリアルにあって、怖くてたまらなかったです。「痛い」までは行かないのですけどね……。
術中に見えていた景色も1度目とは全く違い、より広い範囲に渡っていろいろな色がわちゃわちゃと見えていました。犬のお化けのほうが、気が紛れて良かったな……。
そんなこんなで2度目の手術も終了。1度目の何倍も疲れました。
両眼同時手術はできれば避けたほうが良い
クリニックによっては両眼を同日に手術することもあるようです。仕事をあまり休めなかったり、遠くのクリニックで手術を受ける場合には、確かにそのほうがメリットが大きいですよね。
わたしは間に1週間置いて片目ずつ手術したのですが、これには良い点があります。
先に片目の手術の結果がわかるので、それに合わせてもう片方のレンズを選び直すことが可能なのです。
「実際に手術を受けてみたら、思いの外近くが見えない」などというときに、もう片方のレンズはもう少し近めに合わせる、といったことができるわけです。
この場合、左右の度数が違う「モノビジョン」という状態になります。モノビジョンは合う人、合わない人があるようですが、度数の差が小さければ慣れやすく、違和感もなくなるそうです(裸眼でより広い範囲を見る手法として、好んで選ぶドクターもいらっしゃるとのこと)。
ちなみに親戚で白内障の手術を受けた人がいるのですが、レンズ選びで「先生におまかせします」と言ったところ、片目は遠く、片目は近くにピントを合わせたモノビジョンにされたそうです。本人はそれほど問題を感じないとのことですが、正直わたしは自信ないな……。
さて、術後3日経ってから右目の視力を測定してもらったのですが、0.4~0.6程度を期待していたところ、幸いなことに0.7見えていました。さらに近くも、30cmくらいの距離なら、ぼやけることなくしっかり見えています。まさに僥倖です。
「反対の目は、もし希望ならもう少し近くに合わせたレンズにすることもできますが」と言われましたが、近くも全然見えているのでその必要も感じられず、左目も同じくらいの見え方を狙って手術を受けることになりました。
術後の視力測定
2度目の手術の3日後、改めて両眼の視力測定。どちらも0.7見えていました!
正直、右のほうが見えていない感じがするので、本当に両方とも0.7見えているのかな??って気はするけれど。
ピントについては、どちらの目も1mではなく、80cmくらいに合っている感覚があります。
これは単に屈折誤差で近方にズレたからかもしれないけれど、もしかしたら「モニターの距離が80cm」と言ったせいかもしれないですね。それだったら狙った距離に合ってますからね。
現状、件のモニターもよく見えるし、それより遠くも期待以上に見えているので何の文句もないのですが、もし本当に1mに合わせたい!と強く希望していたのであれば、モニターだけでなく「裸眼で家事全般をしたい」「足元をしっかり見たい」など、その距離を推す理由は複数用意したほうがいいと思いました。これからレンズ選びをされる方、頑張ってドクターに伝えてくださいね!
近くもよく見える!
そしてこれも嬉しい誤算と言って良いかもしれませんが、近くは30cmくらいの距離のスマホがぼやけることなく見えています(25cmくらいになるとぼやけるうえにすごい圧迫感があるけれど)。
つまり、通常の生活においてはメガネは不要、裸眼で特に問題ない感じなのです。
先生は「よく見えるでしょう!」と自画自賛。
スタッフの方からも「遠くも近くもまあまあ見えていて、いい感じですね~」との言葉。
視力が安定してくるまでには1~3ヶ月かかるそうなので、たとえもう少し視力が落ちても0.6くらいで留まってくれたかなり嬉しいですね。
0.6~0.7という視力は元々近視のなかった方ならきっと不満を感じるだろう微妙なラインですし、もちろん多焦点レンズならもっと見えるはずです。ただ自分の場合は、コンタクトをつけたのとそれほど変わらない見え方が裸眼で実現したのですから、これ以上望むのはバチが当たりそうです。
多少の違和感は残るも……
とはいえ、手術から2~3週間経った現在、違和感が全くないと言ったら嘘になります。
手術後3日くらいはかなり眩しく感じて、パソコンのモニターが直視できませんでした。
輝度を落とすための設定すらひと苦労。今のところ、輝度を落としたうえで常時ナイトモードにして使っている感じです。とにかく「白」が青っぽく光って見えるんです。
そのせいか、疲れ目がすごいです。朝起きたときに目の疲れが取れていないことに気づきます。
まあしばらくは仕方ないですね。1~2か月もすれば落ち着くでしょうか。
術後3日目に車に乗ったときには見え方が安定せずに酔いましたが、これは現在は収まっています。
外を歩いたときの地面がゆらゆらする感じは2週間くらいで落ち着いてきて、これももう大丈夫そうです。
早くもメガネの話
で、現状の視力が維持できるなら普通免許の「眼鏡等」を外せそうですが、とりあえず外すまでは違反になっちゃうので裸眼で運転ができません……。
しかしメガネをかけようにもこれまでのメガネはもう合わないので、「保証のあるメガネ屋さんで作りましょう」ということになり、処方箋を作ってもらうことになりました。
裸眼で運転ができるようになったとしても、運転用のメガネがあれば安心ですしね。
処方してもらったレンズの度数は-0.5と-0.75。今まで使っていたコンタクトレンズの度数が-9.0と-11.0だったので、同じ「度数」とも思えない違いです。
「メガネはもしかしたら遠近両用にしないといけないのかな?」と心配していましたが、レンズの度数自体が軽いせいか、通常の近視用のみで良いということになりました。
仮のメガネをかけた状態で手元のスマホを見てみましたが、普通に文字が読めますし、これならメガネをかけた状態でカーナビを見るのも問題なさそうです!
近所のメガネ屋さんですでにフレームは選んだものの、ちょうどレンズが切れていると言われ(え~……)、1週間の入荷待ち。メガネが来るのが待ち遠しいです。
しばらくは目薬生活
手術後、最初の1週間は3種類の目薬(クラビット、ベストロン、ジクロード)を1日3回。
2週間目からは目薬は2種類(クラビット、ジクロード)に。
そして術後3週目からは1種類(ジクロード)のみに減りました。これをしばらく続けていくことになりそうです。
ちなみに手術の前は3日前から別の目薬(ガチフロ)を1日4回さしていましたので、長い目薬生活です。
白内障手術の費用は?
気になる白内障手術の費用なのですが、わたしの場合、保険の利く単焦点レンズを選び、なおかつ日帰りで手術を受けましたので、片目につき4万7,000円ほど(3割負担)で受けることができました。
ただし1ヶ月の医療費の負担額には限度額があるので、平均的な所得の方が同月に両眼の手術を受けた場合、8万円程度で済みます(マイナンバーカードがあればクリニックで簡単に手続きできます)。
さらに個人保険を掛けている方なら、負担はもっと減ることになりますね。
しかし、そもそも1割負担なら両眼でも3万円くらいで受けられるということでしょうか。それでよく見えるようになるなら……安いですね!
レンズの度数選びは人それぞれ
というわけで、今回、単焦点レンズの中間合わせ(1m)を希望して手術を受けましたが、遠方視力もそこそこ出たのはとてもラッキーだったと思います。「白内障」と「近視」以外に問題がなかったことがきっと大きかったのだと思います。
この記事を見て「わたしも1m合わせにしてみようかな」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、遠方視力が0.4だったり、近方は40cmの距離でスマホが見られなかったりというケースも実は想定の範囲内でした。どうしても良い方を期待しちゃいますが……。
なので本当にレンズの度数選びは難しい。ただ、「近視は近く合わせ、遠視は遠方合わせ」との固定観念はちょっと置いておいて、主治医の先生としっかり相談して決められたら良いなあと思った次第です。
これから手術を受けられる方の成功をお祈りします!
コメント